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  <title>月夜遊戯（ツクヨノユウギ）</title>
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  <lastBuildDate>Thu, 18 Aug 2011 13:27:35 GMT</lastBuildDate>
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  <copyright>© Ninja Tools Inc.</copyright>
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    <item>
    <title>TOP</title>
    <description>
    <![CDATA[<div align="left">
	　ゆるゆると更新中．．．Since2007.07.05<br />
	<br />
	&nbsp;</div>
<div align="left">
	<div style="width: 268px; height: 75px; overflow: auto; background-color: rgb(255, 255, 204);">
		<div align="left">
			<font color="#993300">　　　　　　　　　　　　　更新履歴</font><br />
			2011<br />
			08/30　連作「ひだまりの中でUP<br />
			06/26　THANKS　12,000HIT<br />
			06/04　連作「イロトリドリノセカイ」ＵＰ<br />
			04/09　連作「佐和山・落城」UP<br />
			03/16　THANKS　11,000ＨＩＴ<br />
			03/12&nbsp;　「誓い」が表示されない不具合を解消<br />
			ご迷惑をおかけしました（涙）<br />
			03/12　連作「誓い」UP<br />
			03/09　「徒然」にコメントしました<br />
			??/??　THANKS　10,000ＨＩＴ<br />
			<br />
			2009<br />
			09/06　THANKS　8,000ＨＩＴ<br />
			06/04　連作「祈りにも似た」UP<br />
			02/08　THANKS　7,000HIT<br />
			02/07　読切「雪の降る街」UP<br />
			<br />
			2008<br />
			11/19　連作「椿」UP<br />
			10/23　連作「襲撃事件」UP<br />
			10/14　THANKS　6,000ＨＩＴ<br />
			09/09　読切「めめんともり」UP<br />
			08/11　連作「太陽が沈んだ日」UP<br />
			07/11　THANKS　5,000HIT<br />
			06/24　読切「あの日から&hellip;（後）」UP<br />
			04/30　読切「あの日から&hellip;（中）」UP<br />
			04/21　THANKS　4,000ＨＩＴ<br />
			03/22　読切「あの日から&hellip;（前）」UP<br />
			02/13　連作「悔恨」UP<br />
			01/29　連作「業（カルマ）」UP<br />
			01/24　THANKS　3,000ＨＩＴ<br />
			01/04　読切「ねねの戦い」UP<br />
			01/04　読切「最後の願い」企画終了につき転載<br />
			<br />
			2007<br />
			12/05　ブクマ1件解除　お疲れ様でした<br />
			11/16　読切「死ニ至ル病」UP<br />
			10/31　読切「風に消えて&hellip;」UP<br />
			10/28　THANKS　2,000ＨＩＴ<br />
			10/22　連作「その先に見えるもの」UP<br />
			10/15　連作「毒蛇の若子」UP<br />
			10/08　読切「秋の夜長の」UP<br />
			09/27　連作「戦場に咲く花」UP<br />
			09/18　読切「兄の思惑」UP<br />
			09/09　THANKS　1,000ＨＩＴ<br />
			09/09　読切「ヤマアラシ」UP<br />
			09/02　連作「元服」UP<br />
			08/19　人物「宇喜多家」UP<br />
			08/14　読切「夏の日に」UP<br />
			07/30　連作「雨降って」UP<br />
			07/28　連作「ハジマリの場所」UP<br />
			07/19　微妙に人物「小西行長」修正<br />
			07/16　人物「豊臣恩顧2」UP<br />
			07/08　戦国ブクマ、11件追加<br />
			0７/06　短編「続：星に願いを」UP<br />
			07/05　短編「星に願いを」UP<br />
			07/05　サイトオープン<br />
			<font color="#993300">　－－－－－－－－－－－－－－－－－－－</font><br />
			2007　準備期間<br />
			6/30ごろ　人物「豊臣恩顧１」<br />
			6/27ごろ　人物「石田家家臣」<br />
			6/20ごろ　人物「石田兄弟」<br />
			6/9　メイン雛型ほぼ完成<br />
			6/7　INDEX作成</div>
	</div>
</div>
<div align="left">
	<br />
	<img alt="" border="0" height="9" src="//tsukuyono.blog.shinobi.jp/Img/1180970212/" width="28" />　<img alt="" border="0" src="//tsukuyono.blog.shinobi.jp/Img/1180970219/" />　<img alt="" border="0" src="//tsukuyono.blog.shinobi.jp/Img/1180970212/" /><br />
	<br />
	案内図<br />
	<br />
	TOP　　ここです。履歴・サイトマップ・リンク案内・管理人紹介<br />
	人物　　主要キャラやら捏造モブの設定・解説・萌え語り<br />
	読切　　１～２話の短編集や小ネタ等<br />
	連作　　連作短編。詳しくは「説明」にて<br />
	徒然　　数行程度の管理人の呟き。不定期<br />
	※各作品へのコメント書き込みはご自由にどうぞ～。<br />
	<br />
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	<br />
	リンクについて<br />
	<br />
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	張るも剥がすもご自由にどうぞ。<br />
	報告等は必要ありませんが、頂ければ嬉しいです（笑<br />
	注意事項がありますので、リンク先はＩＮＤＥＸにお願いしますー。<br />
	<br />
	ＵＲＬ　<strong>http://tsukuyono.maiougi.com/</strong>（月夜の舞扇）<br />
	管理人　桜月　舞雪<br />
	<br />
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	<br />
	管理人<br />
	<br />
	桜月　舞雪（サクラヅキ・マユ）<br />
	女・3月生まれ・Ｏ型<br />
	周囲の史跡を意識せず訪れていた信州人。<br />
	近すぎて、今更岩松院とか川中島とか上田城とか行けない。<br />
	うっかりOROCHIプレイでうっかり三成にハマり<br />
	史実を調べまくって更に惚れ込む。<br />
	義トリオ・佐和山に始まり、子飼い衆に走り、<br />
	挙句はゲームには名前すら登場せず<br />
	史実ですら影の薄い兄・正澄に興味津々。<br />
	しかしファンサイトですら登場が少ない為<br />
	萌えの行き場が無くなり自分で開設するに至る。<br />
	チキンなのでえろは読み手専門デス。</div>
]]>
    </description>
    <category>ＴＯＰ</category>
    <link>https://tsukuyono.blog.shinobi.jp/%EF%BD%94%EF%BD%8F%EF%BD%90/top</link>
    <pubDate>Sat, 09 Jun 2012 03:52:06 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>ひだまりの中で</title>
    <description>
    <![CDATA[　関ヶ原の戦いから10日ほどが過ぎた。<br />
　捕らえられた石田三成の身柄は大津城に護送されており、数日城門前に生き晒しにされた後、今はその離れに幽閉されている。<br />
　おそらく、これから数日もしないうちに大阪に移され、罪人として引き回しにされるのだろう。<br />
　<br />
<br />
　だが、死が間近に迫っているにも関わらず、その顔は驚くほどに穏やかで。<br />
　白く細い面立ちが、儚げな美しさを際立たせていた。<br />
<br />
　かなかなかな。<br />
　かなかなかな。<br />
<br />
　ひぐらしの鳴き声が耳に入り、三成はわずかに目を見開いた後、小さく微笑んだ。<br />
　この数ヶ月というもの、よほど忙しくしていたらしい。季節が変わっていたことに、まるで気づいていなかった。<br />
<br />
「&hellip;&hellip;そうか」<br />
　ぽつりと、ひとりごちる。<br />
　そこまで、余裕を無くしていたのか、俺は。<br />
　先の戦で、紀之介、父上、兄上、他にも多くの人が逝ってしまった。<br />
　左近討ち死にの報は耳に届いていないが、あの怪我では望みは薄いだろう。　<br />
　戦場から落ちた際に、左近が残した言葉が、未だ耳に残る。<br />
<br />
『生きて、反撃の機会を伺うんですよ。最後まで諦めないで食らいつくのが、この戦を仕掛けた殿の責任って奴でしょう』<br />
<br />
「&hellip;&hellip;全く。簡単に言ってくれる」<br />
　<br />
　左近よ。<br />
　恐らくお前は、俺が再起し、徳川方を廃し、秀頼様の傍らで支える事を望んでいるのだろうが&hellip;&hellip;。<br />
　どうやらそれは、叶えられそうにもない。<br />
　しかし決して、豊臣家の、秀頼様の天下を諦めた訳ではない。<br />
　諦めるはずがない。<br />
　ただ、とても大切なことを思い出したのだ。<br />
　そして、それを信じようと思ったのだ。<br />
<br />
　ああ。<br />
　何故、もっと早くに、気づけなかったのだろう。<br />
　<br />
<br />
「&hellip;&hellip;そこにいるのだろう？　松に、お虎よ」<br />
<br />
　豊臣家の未来を案じているのは、俺だけではないということに。　<br />
<p>
	<br />
	　　　　　*　　　　　*　　　　　*<br />
	<br />
	　<br />
	<br />
	　唐突に。<br />
	　襖の向こうから声をかけられ、加藤清正と福島正則の心の臓は跳ね上がった。徳川方にいらない詮索をされないよう、人目を忍んでやって来ていたものだから、余計に。あまりの驚きに、昔の呼び名で呼ばれていた事にすら、ふたりは気づいていなかった。<br />
	　尤も、彼らとしては、単にからかいに来ただけなのだが。<br />
	　<br />
	　「どうした、入って来ないのか？」<br />
	　鼻持ちならない昔馴染みの三成に、馬鹿にされては適わぬと、正則は襖を開け放った。<br />
	　そして、息を呑んだ。<br />
	「三成、お前」<br />
	「いいから中に入れ。徳川連中が来たら面倒だ」<br />
	　正則の言葉を遮り、清正は彼を押し込むようにして部屋に足を踏み入れる。<br />
	　彼もまた、三成の姿を目にし&hellip;&hellip;ふう、と息をついた。<br />
	　死も近づいているというのに、あまりに落ち着き払ったその顔は、まるで憑き物が取れたのように晴れ晴れとしていて。<br />
	<br />
	　からかいに来た自分が、急に、馬鹿馬鹿しくなった。<br />
	<br />
	「久しいな」<br />
	　どかりと胡坐をかき、三成をまっすぐに見据える。<br />
	「最後に会ったのは、いつになるか」<br />
	　<br />
	「&hellip;&hellip;そうだな。こうやってまともに顔を合わせるのは&hellip;&hellip;そうだ、名護屋の築城以来ではないか？」<br />
	「かもしれぬ。俺とお主とが中心になって、あまりの速さに周りを酷く驚かせた」<br />
	「ああ、そうだった。あれから年月はさほど過ぎていないはずだが&hellip;&hellip;なんだかとても、懐かしい」<br />
	　切れ長の、形のいい目を細める三成。<br />
	　その様子に、清正ははた、と気がついた。<br />
	<br />
	　こんなにも、穏やかに笑うような人物であっただろうか。<br />
	　自分の記憶では、もっと傲慢で、高圧的で、気性が激しく、負けん気が強く、何かにつけて嫌味で、つまりは鼻持ちならない男だったのだが&hellip;&hellip;。<br />
	<br />
	　いや&hellip;&hellip;と、疑念を打ち消す清正。<br />
	　死を目前にして、強がる気力もないだけだろう。<br />
	<br />
	「三成。何故、貴様ほど頭の切れる男が、あのような無謀な戦いを挑んだ？」　<br />
	「本当に、無謀だと思うか？」<br />
	「何？」　<br />
	「結果として、あの老獪な狸の方が根回しが上手かったようだが、家康の首を取る目は充分にあったと思うのだが。例えば小早川、例えば朽木ら。奴らの行いのうち、ひとつが違っていただけで、どう転んでいたか分からぬ。そうは思わぬか？」<br />
	　にやりと、含みのある笑みを浮かべる三成。<br />
	　人によっては、ただの負け惜しみと取るかもしれない。<br />
	　だが清正は、三成は本気で勝つつもりで、あの無謀とも思える戦を仕掛けたのだと感じた。<br />
	「&hellip;&hellip;さて、お虎、そして松よ。俺からも、問いたい事がある。何故、徳川方についた？　秀吉様亡き後の奴の専横ぶりを見れば、どちらが咎められるべきか明らかだろうに」<br />
	　まっすぐに、射抜くように。<br />
	　清正と正則を交互に見やる三成。<br />
	「そんなもん」<br />
	　うなるように、声を漏らした正則が。<br />
	「お前が気に入らなかったからに決まってるだろう！」<br />
	　激昂した。<br />
	「いつもそうだ。その目だ。自分は全て分かっていると言わんばかりにそうやって見下して！」<br />
	　胸倉を掴み、つばを飛ばしながら怒鳴り散らす。<br />
	　三成はわずかに顔をしかめたが、何も言わずに聞いていた。<br />
	「いっつもいっつもいいっつも、後ろから偉そうに講釈たれて小馬鹿にして！　嘘の報告で叔父貴に取り入って、利家公に擦り寄って。都合よく威を借りて、さぞいい気分だっただろうよ！」<br />
	「市松。よせ」<br />
	「&hellip;&hellip;ちっ」<br />
	　清正に静止され、投げ捨てるように手を離すと、三成は崩れ落ちるように畳に伏せた。<br />
	　激しく咳き込みながら、問う。<br />
	「言いたいことは、それだけか？」<br />
	「なんだと、喧嘩を売っているのか？」<br />
	「いや、そうじゃないんだ。&hellip;&hellip;なるほどな」<br />
	　何かを納得した様子で、着物の乱れを直しながら続ける。<br />
	「&hellip;&hellip;そうか。俺は、そのように見られていたのか。昔なじみのお前たちですらそうなのだから、人がついてこなかったのも、無理からぬ話&hellip;&hellip;というわけか」<br />
	　どこか、寂しげに。<br />
	「三成。何故、自決しなかった？　自決していれば、生き晒しなどという辱めを受ける事もなかったろうに」<br />
	「なにを馬鹿なことを」<br />
	　ふん、と鼻を鳴らし、受ける三成。<br />
	「死ねば、そこで終わりだ。反撃する機会の芽を自らつぶすなど、愚か者のすることだ」<br />
	「だが、お前は捕らわれ、辱めを受けた。あとは処刑を待つ身だろう」<br />
	「それでも、その時まで何が起こるかは分からぬのが世の常。それに、もし俺が死ぬことになろうとも、俺の志を受け継ぐ者はいるはず。その者らの為にも、俺は死ぬまで『石田三成』でなくてはならぬのだ。だが、腹を切るという事は、すなわち降服の姿勢を見せるということ。その方が、俺にとっては屈辱だ」<br />
	　相変わらずの、自負心の塊のような論に、苦笑するしかなかった。<br />
	　と同時に、安心もした。<br />
	「変わらないな、お前は」<br />
	「それはお互い様だろう」<br />
	　その途端、苦しげに顔を歪め、激しく咳き込んだ。口元を押さえた手の中に、わずかに混じるのは――朱。<br />
	「三成、お前、それ！　もしかしてさっき、変なとこぶつけたのか！？」<br />
	　血相を変えた正則を制する三成。<br />
	「案ずるな。この数ヶ月の間、少し、無理をしすぎた。それが祟っただけだ」<br />
	　しかしそうは言うものの、ぜえぜえと、息を整える音が痛々しい。<br />
	<br />
	　清正は思案した。<br />
	　一体この男は、こんなになるまで無理を押して、ひとりで何と戦ってきたというのだ？<br />
	　豊臣家の中枢に返り咲き、権力を己が物にする為の私闘ではなかったのか？<br />
	　だから、朝鮮出兵を利用して、武断派を排除しようと虚偽の報告をしていたのではなかったのか？<br />
	　秀吉様に取り入り、利家公に擦り寄り、威を借りていたのではないのか？<br />
	<br />
	　今まで見てきたはずの「三成」と。<br />
	　こうして目の前にいる「佐吉」と。<br />
	　その差はなんだ？　何が違う？　なにがおかしい？<br />
	<br />
	　変わったのは、なんだ？<br />
	<br />
	<br />
	　ただ、ひとつわかったことは。<br />
	　この男の中にあるのは、今も昔も変わらず、豊臣家を何よりも大切に思っているということだ。<br />
	<br />
	<br />
	　<br />
	<br />
	　志は同じであったはずなのに。<br />
	<br />
	「俺たちとお主の生きる道は、一体どこで、分かれてしまったのだろうな」<br />
	「&hellip;&hellip;何を言っている」<br />
	　ぽつりと呟いた清正の言葉に、息を整えた三成が答える。<br />
	「分かれてなどおらぬ。俺もお前たちも、昔から今に至るまで、豊臣のことばかりを考えているではないか。ただ、やり方が違っただけのことだ」</p>
<p>
	　ふうう、と、長く、息をつく三成。<br />
	「俺は、ひとりで背負いすぎた。ひとりででやらなければならぬと、思い込んでいた。それが、間違っていたのだろうな。豊臣家臣団の中に亀裂が生まれ、いいように利用されてしまった。&hellip;&hellip;もう少し早く、お前たちを頼っていれば、徳川の狸の専横も食い止められていたのかもしれないな。&hellip;&hellip;だが、まだ遅くはないと信じている」<br />
	　まっすぐに。<br />
	　清正と正則を交互に見据え、彼は言った。<br />
	「だから頼む。松に、お虎よ。&hellip;&hellip;秀頼様を、豊臣家を、家康から守ってくれ」<br />
	<br />
	　それは、矜持の塊とも言うべき誇り高き男から発せられた、最初で最後の頼みだった。<br />
	<br />
	　二人は思わず肩に手を置き、見た目より遥かに細くなっていたそれに驚愕した。<br />
	　こんな細い体で、豊臣を案じ、守ろうとしてきたのか。<br />
	「無論だ。任せておけ」<br />
	<br />
	<br />
	　　　　　*　　　　　*　　　　　*<br />
	<br />
	<br />
	　それから数日後、石田三成は小西行長、安国寺恵瓊と共に六条河原で処刑された。<br />
	　<br />
	<br />
	　<br />
	　それはとても穏やかな日のことで。<br />
	　雲ひとつない秋晴れの空は。<br />
	<br />
	　悲しいほどに、高く、澄み切っていた。<br />
	<br />
	<br />
	　&hellip;&hellip;そう。<br />
	　まるで、石田三成の生き様を象徴するかのように。<br />
	&nbsp;</p>
]]>
    </description>
    <category>[連作]ひだまりの中で★</category>
    <link>https://tsukuyono.blog.shinobi.jp/-%E9%80%A3%E4%BD%9C-%E3%81%B2%E3%81%A0%E3%81%BE%E3%82%8A%E3%81%AE%E4%B8%AD%E3%81%A7%E2%98%85/%E3%81%B2%E3%81%A0%E3%81%BE%E3%82%8A%E3%81%AE%E4%B8%AD%E3%81%A7</link>
    <pubDate>Tue, 30 Aug 2011 15:15:43 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>イロトリドリノセカイ</title>
    <description>
    <![CDATA[　&hellip;&hellip;いったい、あれからどれくらいの時が過ぎたのだろうか。<br />
<br />
　暗い、洞窟の中。<br />
　疲労は極限に達していた。<br />
　強い眠気が波のように押し寄せてくる一方で、いざ眠りに落ちそうになるとびくりと体が跳ね、目が覚めてしまう。まるで、体が眠りを拒んでいるかのように。<br />
　衰弱しきった体を襲うのは、酷い動悸に吐き気、寒気、頭痛。<br />
　もう長いこと、まともに眠れていない気がする。<br />
<br />
　ここがやけに暗いのは、洞窟に光が届かないせいだろうか。<br />
　それとも&hellip;&hellip;。<br />
　<br />
<br />
（いや）<br />
　音にならない声で、石田三成は呟いた。<br />
（こんなところで）<br />
　指先で地面を掻くと、じゃり、と爪の間に土が入ってきた。<br />
（朽ち果ててなるものか）<br />
<br />
　俺にはまだ、やらねばならないことがある。<br />
<br />
<br />
　だが。<br />
　その強い意志の宿っていた瞳も。<br />
　今では暗く曇り、霞んでいた。<br />
<br />
<br />
　――あの、関ヶ原の敗戦から、すでに5日。<br />
　追手の影に怯えながら山の中を昼も夜もなく彷徨い、ようやく故郷まで辿り着いたものの、その間、まともに眠れず、食べる事も出来なかった彼の体は、とうに限界を超えていた。<br />
　それでも死なずにいられるのは。<br />
　豊臣家を滅ぼさせまいとする意地と。<br />
　出来るのは自分だけだという矜持。<br />
　ただ、それだけだった。<br />
<br />
<br />
　<br />
　　　　　*　　　　　*　　　　　*<br />
<br />
<br />
「&hellip;&hellip;？」<br />
　藤高は、ふと、小さな洞窟の前で足を止めた。<br />
「どうなすったんで？」<br />
　一緒に見回りをしていた、百姓の男が声を掛けてくる。佐和山城から逃がした子供たちと共に、藤高が身を寄せている村の者だ。名を、与次郎太夫という。<br />
「&hellip;&hellip;なんだか」<br />
　妙な気配がする&hellip;&hellip;言いかけ、藤高は言い淀んだ。<br />
　何かに呼ばれるような、誘われるような、と言ったところで、気味悪がられるだけだ。<br />
　彼は何も言わず、洞窟に足を踏み入れた。<br />
<br />
　中は薄暗く、酷い臭いがした。<br />
　どんよりと圧し掛かるような、重い空気の、におい。<br />
「&hellip;&hellip;誰か、いるのか？」<br />
　返事はない。<br />
　聞こえてくるのは、反響する己の声と&hellip;&hellip;。<br />
<br />
　呻くような、言葉にならない低い声。<br />
<br />
「ひぃっ」<br />
　情けない声を上げた与次郎をよそに、藤高は更に奥へと突き進む。<br />
　そして、見つけた。<br />
　ほんの数日前まで、片腕として傍に仕えていた亡き友の、その弟を。<br />
　だが、その姿は見る影もなくやせ衰え、眼窩は落ちくぼみ、まるで別人のようだった。<br />
　ひび割れた唇が動き、うわごとのように何かを呟いているが、呻くばかりで言葉にはなっていない。<br />
「&hellip;&hellip;なに、やってるんだ」<br />
　ふつふつと、怒りが湧いてくる。<br />
「こんな所で&hellip;&hellip;何を、やっているんだ&hellip;&hellip;っ」<br />
　ちかちかと、脳裏にちらつくのは。<br />
　春の陽のように柔らかく微笑む友の顔。<br />
　しかし、その友人の弟――三成の返事はなく。<br />
　見知った者の声を聞いて安心したのか、緊張が途切れたのか。<br />
　ふつりと、糸が切れるように意識を失った。<br />
<br />
　感情のやり場を失くした藤高が土壁を殴ると、低い音をたてて洞窟が揺れ、細かい土がぱらぱらと落ちてきた。<br />
<br />
<br />
　　　　　*　　　　　*　　　　　*<br />
<br />
<br />
　お尋ね者の石田三成がいる――。<br />
　藤高は、この事が徳川方に知れたら村人が皆殺しに遭うからと、見なかったことにするよう与次郎を説得した。だが、彼は頑として聞く耳を持たなかった。なんでも、かつて村が飢饉に見舞われた際、村に米を分け与えて救ってくれたのだと。<br />
　だから、今度は自分が守るのだと。<br />
<br />
　藤高と与次郎は洞窟に三成を匿い、甲斐甲斐しく介抱した。<br />
　結果、あたりが暗くなり始めた頃には意識を取り戻し、翌日の昼には体を起こせるまでに回復したのだった。<br />
<br />
「&hellip;&hellip;そうか」<br />
　佐和山落城の報を告げられ、三成は目を伏せ、息を吐いた。<br />
　深く、深く。<br />
　湯呑椀に湛えられた水が、手の中で震えている。<br />
「俺は&hellip;&hellip;何をしていたのだろうな」<br />
　ぽつりと。<br />
　珍しく弱音を吐くのは、心身が弱っているせいか。<br />
　それとも&hellip;&hellip;。<br />
「全てを失った。何もかも&hellip;&hellip;失くしてしまった」<br />
　彼を形作っている意地が、矜持が、音を立てて崩れていく。<br />
「&hellip;&hellip;すまない、藤高」<br />
　三成は笑顔を浮かべ、藤高を見つめた。<br />
「しばらく、一人にしてくれないか」<br />
　それはとても穏やかで。<br />
　空っぽで。<br />
　まるで、全てを拒絶しているかのようだった。<br />
<br />
　&hellip;&hellip;あぁ。<br />
　藤高は、心の中でうめいた。<br />
　終わらせるつもりなのだ、ここで。<br />
<br />
　全てを無責任に放り出して。<br />
<br />
<br />
「&hellip;&hellip;ふざ&hellip;&hellip;けるな」<br />
　気づいたら、声が出ていた。<br />
「死んで仕舞いにするつもりか！」<br />
　声を荒げたのは、何年振りだろうか。<br />
　幼い子供のころ以来、かもしれない。<br />
<br />
　三成の返事はない。<br />
　それはつまり、肯定を意味していた。<br />
「&hellip;&hellip;っ」<br />
　藤高の拳が、三成の頬を捉えた。<br />
「ちょ、ちょっと、藤高殿？」<br />
　うろたえる与次郎をよそに、殴られて崩れ落ちた三成に向けて、藤高が激昂する。<br />
「弥三も、大殿も、他の皆も、一体、何のために死んでいったと思っているんだ！」<br />
　ぼろぼろと、大粒の涙がこぼれる。<br />
　握りしめた拳は、がくがくと震えていた。　<br />
<br />
　誰かを殴るのは、初めてだった。<br />
<br />
「あなたについて行くと、みんな、あなたを信じて、命をかけて戦ったのに&hellip;&hellip;っ！　肝心のあなたが諦めたら、そんなのっ&hellip;&hellip;ただの無駄死にじゃないか！」<br />
「&hellip;&hellip;」<br />
「生きて、反撃の機会を伺って、最後まで諦めないで食らいつくのが、それが&hellip;&hellip;っ！　それが、あなたの責任じゃないのか！」<br />
<br />
　しかし、三成は何も答えない。<br />
　絞り出すように、藤高が言葉を紡いでいく。<br />
<br />
「佐吉さん&hellip;&hellip;。頼むから&hellip;&hellip;何か答えてくれ&hellip;&hellip;。私は、あなたにも、あなたを信じた弥三にも&hellip;&hellip;幻滅したくないんだ&hellip;&hellip;。だけど&hellip;&hellip;もし、私の言っている事がわからないなら&hellip;&hellip;どんな言葉も伝わらないなら&hellip;&hellip;もう、好きにしろとしか&hellip;&hellip;言えない」<br />
　そう、言い残して。<br />
　藤高は与次郎を伴って洞窟を出た。<br />
<br />
<br />
　何を言っても通じないかもしれない――。<br />
　もう、駄目かもしれない――。<br />
　悪い考えばかりが頭の中をぐるぐると廻り、藤高はみっともなく泣きじゃくり、嗚咽していた。<br />
<br />
　目の奥が重い。<br />
　鼻の奥がひりひりする。<br />
<br />
　与次郎が何も言わずにいてくれるのが、ありがたかった。<br />
<br />
<br />
　どのくらい泣いただろう。<br />
　背後で、かすかに物音がした。<br />
「&hellip;&hellip;殿様」<br />
　目を丸くして、与次郎。<br />
　這い出すように洞窟から出てきた三成は、すこしばつが悪そうに与次郎を見やり、藤高の傍らに座りこんだ。<br />
「&hellip;&hellip;同じ事を、左近にも言われたよ。最後まで食らいつくのが、俺の責任だと。&hellip;&hellip;すまん、藤高。辛い思いをさせてしまったな。だが&hellip;&hellip;」<br />
　軽く目を伏せ、殴られた頬を押さえる。<br />
「おかげで、目が覚めた」<br />
　藤高は、黙って首を振った。<br />
　三成は僅かに笑顔を浮かべた。先ほどのものとは違い、しっかりと中身のある笑顔だった。<br />
「お前は変わった。昔は、波風を立てないように言葉を選び、声を荒げる事など無かったのに」<br />
「&hellip;&hellip;人は、変わる。だけど&hellip;&hellip;あなたは変わらない。寄りかかるものがなくなると、途端に弱くなる」<br />
「手厳しいな。だが、その通りだ。俺は、弱い」<br />
<br />
　ゆっくりと、立ち上がる。<br />
　あたりを撫でるように吹き抜けていく秋風は、ひんやりと心地よく。<br />
　陽に照らされた紅葉は、きらきらと輝いていた。<br />
<br />
「あぁ&hellip;&hellip;」<br />
　深く、三成は感嘆の声を漏らした。<br />
「世の中というものは、こんなにも眩しかったのか」<br />
　目を細め、色とりどりに染まった山を、晴れ渡った空を、眺め見る。<br />
<br />
「思えば、秀吉様が亡くなられてからというもの、俺の目に映る世は常にどこか暗かったように思う。豊臣の世を、秀頼様を守れるのは俺しかいないと&hellip;&hellip;そのように凝り固まってしまった心が、そう見せていたのかも知れぬ」<br />
　ぽつり、ぽつりと。<br />
　言葉を選ぶように、呟いていく。<br />
「だから、松もお虎も去っていったのだ。だから&hellip;&hellip;俺は、敗れたのだ」<br />
　憑き物が取れたのか、三成の顔は、この秋の空のように晴れ晴れとしていた。<br />
「佐吉、さん？」<br />
「俺は、最後まで俺でなければならぬ。皆の為にも」<br />
　三成は与次郎に目をやり、告げた。<br />
「これから、酷な事を頼むが、聞いてくれるか？」<br />
「殿様の頼みとありゃあ、俺に出来る事でしたら、喜んで」<br />
「済まぬ。おそらく、麓の徳川の陣に田中吉政という男がいるはずだ。そいつを呼んできてくれないか」<br />
「殿様！？」<br />
「佐吉さん、何を！」<br />
「&hellip;&hellip;何、あいつとは旧知の仲だ。悪いようにはすまい」<br />
<br />
　まるで、いたずら小僧のような顔つきだ。<br />
　藤高は、心の中で思った。<br />
　徳川方に捕えられたら、命はないだろうに。<br />
<br />
　三成は、麓の、徳川方の陣が敷かれている方に向かい、言葉を発した。<br />
「これが俺の、最後の戦いだ。俺は逃げぬ。何者にも屈さぬ。&hellip;&hellip;石田治部少輔三成の生き様、その目に焼き付けるがいい」]]>
    </description>
    <category>[連作]イロトリドリノセカイ</category>
    <link>https://tsukuyono.blog.shinobi.jp/-%E9%80%A3%E4%BD%9C-%E3%82%A4%E3%83%AD%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%89%E3%83%AA%E3%83%8E%E3%82%BB%E3%82%AB%E3%82%A4/%E3%82%A4%E3%83%AD%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%89%E3%83%AA%E3%83%8E%E3%82%BB%E3%82%AB%E3%82%A4</link>
    <pubDate>Fri, 03 Jun 2011 16:52:16 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>佐和山・落城</title>
    <description>
    <![CDATA[　慶長5年9月15日。<br />
　石田三成らが率いる西軍は、相次ぐ裏切りにより瓦解し、徳川家康率いる東軍の前に敗れた。<br />
　それは、あまりにあっけない幕切れであった。<br />
<br />
「&hellip;&hellip;そうですか」<br />
　報せを受けた三成の兄、正澄は呟くように言った。<br />
　三成は戦場から逃げ落ちたと聞いているが、無事なのだろうか&hellip;&hellip;。<br />
　安否が定かではない以上、城を落とさせる訳にはいかない。とはいえ、城に残された兵は２８００ほど。果たして、勝利で勢いづいているであろう徳川の大軍を前に、一体どれたけの抵抗が出来るだろうか。<br />
　城には、多くの女子供もいるというのに。<br />
「藤」<br />
　正澄は、側近であり幼馴染でもある藤高に告げた。<br />
「貴方は城にいる子供たちを連れて、ここを出なさい。徳川軍が攻め寄せるのも、時間の問題です」<br />
「い、嫌だ。わっ&hellip;&hellip;私も、石田家の家臣。逃げるわけには、いかない」<br />
　しかし、その眼に浮かぶのは、恐怖。<br />
　肌も、唇も、みるみるうちに血が抜けていき、体は細かく震えていた。<br />
　正澄は真っすぐに藤高を見つめた。そこには、いつもの穏やかさは微塵もなく&hellip;&hellip;薄氷で拵えた鋭い刃物のように張りつめ、弟によくにたその顔は、ぞっとするほどに美しかった。<br />
「戦う事の出来ない貴方がここにいても、邪魔なだけです。&hellip;&hellip;さ、早く」<br />
　震える肩に手を添えると、藤高の体がびくりと跳ねた。<br />
<br />
　幼いころ、目の前で家族を惨殺された藤高に、これから起こるであろう惨劇を見せるのは、あまりに酷というもの――。<br />
<br />
　その言外の思いを汲んでか、彼は年甲斐もなく、ぼろぼろと大粒の涙をこぼした。<br />
「や、ぞ&hellip;&hellip;。ごめ&hellip;&hellip;っしょに&hellip;&hellip;たた、え、くて」<br />
「謝る必要などありません。貴方は、貴方に出来る方法で、戦いなさい。子供たちを逃がし、生き延びさせるのも、先に繋がる戦いのひとつです」<br />
「わか&hellip;&hellip;った」<br />
「ほら、涙を拭きなさい。&hellip;&hellip;全く。いい年をして、子供たちに笑われますよ」<br />
　ふわり、と一瞬。<br />
　いつものように穏やかに微笑んで。<br />
「行きなさい」<br />
　三度、脱出を促した時には、その穏やかな顔は無くなっていた。<br />
<br />
　無言が、重い。<br />
　聞こえるのは、藤高の身支度を整える音と。<br />
　外からほんの微かに聞こえてくる、喧噪らしきもの。<br />
「&hellip;&hellip;弥三」<br />
　無言のまま支度を終えた藤高は、立ち去り際、振り返らずに口を開いた。<br />
「なんです？」<br />
「全部が終わったら、また、いつもの茶屋で団子を食べよう。今度は私も、一緒に食べるから&hellip;&hellip;甘いものは苦手だけど、一緒に」<br />
「&hellip;&hellip;そうですね。また、前のように」<br />
　それきり、振り返ることもなく、別れも告げず、藤高は出て行った。<br />
<br />
<br />
「行ったか」<br />
　藤高が去るのを待っていたかのように奥の間から現れたのは、彼らの父、石田正継。<br />
「&hellip;&hellip;はい」<br />
「泣いている暇はないぞ」<br />
「存じています」<br />
　涙が溢れそうになっていた目頭を押さえ、正澄は、まっすぐに父を見つめ、告げた。<br />
<br />
「では父上、参りましょうか。&hellip;&hellip;死地へ」<br />
<br />
<br />
<br />
　佐和山城は奮闘した。<br />
　小早川秀秋率いる大軍に対して、圧倒的に不利な状況であるにも関わらず、決して引けを取る事はなかった。<br />
<br />
　しかしそれも、長くは続かなかった。<br />
<br />
　籠城戦から3日――。<br />
　備蓄も底が見え始め、極度の疲労と緊張で兵たちの気力ももはや限界だった。<br />
（&hellip;&hellip;もう、これまでか）<br />
　正澄は、ふう、と息を吐いた。<br />
　見上げた空は、どこまでも高く青く、憎らしいほどに澄んでいる。<br />
「お団子、食べたかったんですけどね」<br />
　明らかに場違いな、しかし彼にとっては大切な言葉を、ぽつりと呟いた。<br />
　しかし、その言葉の意味を知る者は、誰もいなかった。<br />
<br />
<br />
<br />
　正澄は武装を解き、父とともに交渉に出た。<br />
　自分たちの首と引き換えに、城にいる者たちを見逃してほしい、と。<br />
　<br />
　徳川方は快諾した。<br />
<br />
<br />
　&hellip;&hellip;しかし、それはすぐに裏切られた。<br />
<br />
　城門が開かれるや否や、既に戦意を失っている兵を切り捨てるばかりでなく、あろうことか、逃げ惑う女たちにまで襲いかかったのだ。<br />
「この下衆どもめが&hellip;&hellip;」<br />
　唸るように、吐き捨てるように、正継。<br />
「徳川の狸が考えそうな事よ。何が太平か。己の欲の為に内乱を利用し、結果、犠牲を増やしただけではないか。&hellip;&hellip;あのまま大人しく秀頼君を支えておれば、この者らも死なずに済んだものを！」<br />
　しかし、もはや何を言っても後の祭り。<br />
　いきり立った兵たちを止める術は、惨殺が終わる以外にない。<br />
　目の前で繰り広げられる惨劇に、正澄は整った顔を大きく歪めた。<br />
「佐吉君が敗れて良かった&hellip;とすら思ってしまいますね。このような外道の上を行くには、それ以上の外道にならねばなりませんから」<br />
　吐き捨てるように、正澄は言い放ち、軍勢の中心に立つ秀秋を睨みつけた。<br />
　その強すぎる双眸に、ひぃっと小さな悲鳴を上げて怯む秀秋。<br />
「裏切り者の腰ぬけ金吾よ、この首はくれてやろう。良かったな、家康への手土産が出来たぞ？」<br />
　その瞳は、暗く、しかし強く光り、秀秋を捉えて離さない。<br />
　秀秋はただ、青くなってがくがくと震えるだけだった。<br />
<br />
　口元に、冷たい笑みが浮かべ。<br />
　正澄は、懐から取り出した短刀を己の腹に押し当てた。　<br />
「さあ。石田の誇り&hellip;とくとその眼に焼きつけるがいい」<br />
　ずぶり、と刃を腹に突き立て、一文字を描きながら。<br />
　それでもその眼は、秀秋を真っすぐに捉えて離す事はなかった。<br />
<br />
　ごぼごぼと、血を吐きながら、最後の言葉を紡いだ。<br />
<br />
「&hellip;&hellip;屑めが」<br />
<br />
<br />
　　　　　*　　　　　*　　　　　*<br />
<br />
<br />
　殺戮の終わった佐和山城で、生き残っている者は徳川方の兵ばかり。<br />
　何かにつけて贅を極めた豊臣秀吉の近くに、幼いころから仕えていた三成の居城である。さぞかし、見たこともないような豪華な品が、山のような金銀が、蓄えられている事だろう――。<br />
　色めき立った兵たちは、我先にと城の中を漁った。<br />
<br />
　しかし、城の中は質素で、財宝どころか目を引くような調度品すらなかった。<br />
　壁すらも、打ちっぱなしである。<br />
　秀吉の片腕として傍にいた者が住むには、あまりに質素。<br />
　いや、それすらも通り越してみすぼらしさすらある。<br />
<br />
　思い返してみれば、普段身につけていたものも、華美なものは好んでいなかったように思う。もっとも、何かと交渉ごとをする事が多い立場上、質の良いものは選んでいたようだが。<br />
　何にせよ、兵たちが探し求めるようなものは、何一つとしてこの城には無かった。<br />
　<br />
　<br />
　やがて、兵たちが城中を荒らしまわってようやく見つけたものは。<br />
　三成が愛用していた文机の奥に、大切にしまわれていたものは。<br />
<br />
　それは、秀吉から送られた感謝状&hellip;&hellip;ただ一つだけだった。<br />
<br />
<br />
－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－<br />
<br />
　史実では、正澄さんは9月15日に亡くなっていたようですが。<br />
　落城の経緯も、一部の兵が秀秋と内通して手引きしたのが決定打。<br />
　秀秋&hellip;&hellip;ここでもお前か。]]>
    </description>
    <category>[連作]佐和山・落城</category>
    <link>https://tsukuyono.blog.shinobi.jp/-%E9%80%A3%E4%BD%9C-%E4%BD%90%E5%92%8C%E5%B1%B1%E3%83%BB%E8%90%BD%E5%9F%8E/%E4%BD%90%E5%92%8C%E5%B1%B1%E3%83%BB%E8%90%BD%E5%9F%8E</link>
    <pubDate>Fri, 08 Apr 2011 17:09:10 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">tsukuyono.blog.shinobi.jp://entry/42</guid>
  </item>
    <item>
    <title>呟き３</title>
    <description>
    <![CDATA[<table border="2" cellspacing="0" bordercolor="#6e7955" summary="" cellpadding="1" width="252" align="center" style="width: 350px; height: 72px">
    <tbody>
        <tr>
            <td bgcolor="#6e7955">
            <p style="text-align: left"><font color="#ffffff">１１．０３．１５</font></p>
            </td>
        </tr>
        <tr>
            <td style="text-align: left">2011年3月11日14時46分。<br />
            ご存じの通り、東北地方を中心に、観測史上最大となる巨大な地震が起りました。<br />
            日々、更新される情報にただただ心を痛めるばかりですが、地震から数日が過ぎて少し気持ちも落ち着きましたのでご挨拶をば&hellip;&hellip;。<br />
            <br />
            まず、この巨大地震で亡くなられた方、ご遺族の皆様に心から哀悼の意と、ご冥福をお祈り申し上げます。 <br />
            また、被災された全ての人に心からのお見舞いを申し上げます。<br />
            <br />
            このサイトに訪れてくださった方の中に、被災した方がいるかもしれません。<br />
            亡くなってしまった方もいるかもしれません。<br />
            ご家族やご友人を亡くしてしまった方もいるかもしれません。<br />
            そう考えると、とても悲しいです。<br />
            <br />
            ですが、悲しんでばかりはいられません。<br />
            災害に遭われた皆様の為に出来る事&hellip;&hellip;。<br />
            （募金は当然として）<br />
            それは、諦めない事、そして、信じる事。<br />
            現地の方々が諦めていないのに、被害のない人たちがムダにパニック起こして悲観的になっちゃダメでしょーと、思うわけです。<br />
            <br />
            辛い日々だという事は想像に難くありません。<br />
            こんな事を言うのは酷だとは思います。<br />
            ですがどうか、頑張ってください。<br />
            私も頑張りますから。<br />
            日本の未来を諦めませんから。<br />
            日本の底力を信じていますから。<br />
            <br />
            <br />
            <br />
            なお<br />
            こちら（長野県北部）にも東北地震の揺れは届き、また、明け方にも地震が発生しましたが、私も家族も無事です。<br />
            ご報告までに。</td>
        </tr>
    </tbody>
</table>
<br />
<br />
<table border="2" cellspacing="0" bordercolor="#6e7955" summary="" cellpadding="1" width="252" align="center" style="width: 350px; height: 72px">
    <tbody>
        <tr>
            <td bgcolor="#6e7955">
            <p style="text-align: left"><font color="#ffffff">１１．０３．０９</font></p>
            </td>
        </tr>
        <tr>
            <td>
            <p style="text-align: left">何年ほったらかしてるんだって感じで申し訳&hellip;orz<br />
            <br />
            メールや拍手、コメントありがとうございます！<br />
            こんな停滞した辺境サイトに足を運んでくださって嬉しいやら申し訳ないやら（とっほっほ<br />
            <br />
            ついにＰＳ３でも戦国無双３が発売されましたねー。<br />
            子飼いスキーなのでキュンキュンしておりますｖ<br />
            <br />
            清正がかっこよすぎる。声が銀ちゃん（銀魂）なのもイイネ！<br />
            正則が馬鹿すぎてかわいいｗ<br />
            三成は相変わらずモエス。殿かわいいよとの（壊<br />
            左近シナリオは子飼い好きには堪らないらしいのでとっておき中。<br />
            <br />
            公式との設定が違いすぎ＆放置しすぎで、今更感もあって小説の追記があるかは未知数ですが（ぉぃ<br />
            埋もれていたプロットを掘り起こしてみたら、連作だけでも書き上げたくなってしまった今日このごろ。<br />
            年度開ければ、少しは時間が取れるか&hellip;。いやどうだろう。<br />
            <br />
            ひとまず、久々のごあいさつということで&hellip;。<br />
            <br />
            －－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－<br />
            <br />
            コメント・メールレス<br />
            <br />
            拍手<br />
            2010/12/17 01:39 様＞<br />
            非常に遅いレスで申し訳ありませんorz<br />
            長浜っ子の関係が大好きと言ってくださってありがとうございます。<br />
            ねつ造にも関わらず、違和感がないと評価して頂いて心強いです。<br />
            <br />
            メール<br />
            2011/03/06 asaki様＞<br />
            「死ニ至ル病」は私自身も気に入っている作品なので、嬉しいです。<br />
            行長は厳密には秀吉子飼いではないと思うのですが、三成ら子飼い衆との関わりが強い為、便宜上「子飼い」に含めています。<br />
            （※行長も子飼いに含まれると見る方もいるようです）</p>
            </td>
        </tr>
    </tbody>
</table>
<div style="text-align: left"><br />
&nbsp;</div>]]>
    </description>
    <category>[徒然]呟き3</category>
    <link>https://tsukuyono.blog.shinobi.jp/-%E5%BE%92%E7%84%B6-%E5%91%9F%E3%81%8D3/%E5%91%9F%E3%81%8D%EF%BC%93</link>
    <pubDate>Tue, 15 Mar 2011 14:53:41 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">tsukuyono.blog.shinobi.jp://entry/41</guid>
  </item>
    <item>
    <title>誓い</title>
    <description>
    <![CDATA[　日に日に専横を増大させていく徳川家康に対抗すべく、宇喜多秀家に呼応する形で石田三成は挙兵した。<br />
　わずかな暇も惜しむように、諸大名に文を送り、足を運んでは頭を下げ、ようやく徳川勢に対抗できるだけの兵力を揃えることが出来た。<br />
<br />
「いいかい？　絶対に、表に立ってはいけないよ」<br />
　親友、大谷吉継は諭すように言う。<br />
「君は、敵を作りすぎてしまったからね&hellip;&hellip;反目する者も現れるだろう。この戦いに勝ちたかったら、裏に徹するんだ。昔の&hellip;&hellip;荷駄隊の指揮や兵糧の管理をしていた、あの頃のようにね」<br />
　その言葉を信じて従い、結果、総大将として毛利輝元を担ぎあげる事にも成功した。<br />
<br />
<br />
　高台を抑え、会津から転身してきた徳川勢をぐるりと取り囲むように配した完璧な布陣。<br />
　負ける要素は、なかった。<br />
<br />
　&hellip;&hellip;はずだった。<br />
　<br />
<br />
<br />
　それなのに。<br />
<br />
<br />
　開戦の直前になって、総大将の毛利輝元が出兵を拒否。<br />
　小早川秀秋は松尾山に陣を敷いていた伊藤盛正を追い出し、強引に陣を敷いた。<br />
<br />
　そして慶長5年9月15日――。<br />
　三成率いる西軍の胸中を具現化しているかのような深い霧の中で、戦いの火蓋が切って落とされた。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
　最初は、地形の有利もあって西軍優位に事が進んでいた。<br />
　しかし、輝元の代理で陣についた秀元も、四国の雄・長宗我部盛親も、安国寺恵瓊も、どうやら徳川に内応していたらしい吉川広家に阻まれて身動きが取れずにおり、三成が敷いた鶴翼の陣は片翼を失っていた。<br />
　また、九州の島津勢も、気分を害したとかで動こうとしない。<br />
　決め手に欠き、数でも劣る西軍が、東軍に押し切られるのは時間の問題だろう。<br />
<br />
（所詮は、寄せ集め&hellip;&hellip;か）<br />
　三成の懐刀である島左近は心の中で呟き、苦虫を噛み潰したような表情の主を見つめた。<br />
　その左近もまた、開戦早々に銃撃によって深手を負っており、前線に立てずにいる。<br />
　肝心なところで役に立てない事の、何と歯がゆい事か。<br />
（松尾山の麓に、吉継さんが陣を敷いているのが、せめてもの救いですかね）<br />
　不穏な動きを見せている、小早川秀秋への睨み。<br />
　それが聴いているのかいないのか。<br />
　&hellip;&hellip;残る鶴の片翼は、辛うじて折れずにいた。<br />
<br />
<br />
　その吉継率いる大谷隊は、小早川隊の裏切りに備えて兵を温存しながらも、藤堂、京極両隊を相手に善戦を繰り広げていた。<br />
　鬼気迫るほどの士気と、目を見張るような采配。<br />
　小勢でありながら、決して引けを取らない。<br />
「秀秋や、あの辺りで静観している脇坂たちが動いてくれればね」<br />
　戦況は、家臣の湯浅五助を通じて聞いている。<br />
　西軍が一枚岩でない事には気づいていたが、口をつかずにはいられない。<br />
（さて、どうしたものだろうか）<br />
　決め手に欠くこの戦。<br />
　どこかで西軍有利であることを見せつけ、静観している者たちを鼓舞しなければ、勝ち目はない。<br />
<br />
<br />
　――だがしかし。<br />
　先に均衡を崩したのは、東軍の方だった。<br />
　<br />
<br />
　突如として、松尾山から秀秋率いる大群が駆け下り、大谷隊を急襲したのだ。<br />
<br />
<br />
「殿！　小早川隊がこちらに向けて兵を動かしました」<br />
「&hellip;&hellip;やっぱりね」<br />
　五助の報を受け、吉継は頷いた。<br />
「秀秋は実戦経験が少ない。兵の数は多いけどね、それだけだよ。ろくに指揮は出来ないだろうから、この人数でも充分にやれるはず。&hellip;&hellip;さあ、別動隊の出番だ」<br />
　吉継は口元に笑みを浮かべた。<br />
「わたしたちの力を、裏切り者に見せつけてあげようか」<br />
<br />
　吉継の精鋭部隊は、数で圧倒する小早川隊を2度3度と押し戻した。<br />
　それは苛烈を極め、まさに鬼神のようであった。<br />
　怯んだ小早川隊に追撃を仕掛けようとした、その時。　<br />
　――事態は一変する。<br />
　これまで静観を決めていた脇坂安治ら４つもの隊までもが、吉継目がけて襲いかかってきたのだ。<br />
<br />
「&hellip;&hellip;まさか、彼らまでも裏切るとは、ね」<br />
　これまで、か。<br />
　東軍、小早川、脇坂ら&hellip;&hellip;三方を取り囲まれてしまえば、さすがの吉継とて勝ち目はない。不自由な身で逃げ通せるはずもない。<br />
　ならば、自分が取る道は&hellip;&hellip;。<br />
「五助」<br />
　彼は、傍らに控える腹心を呼び寄せた。<br />
「これから、君には辛い事を頼むけれど、聞いてくれるかな」<br />
「&hellip;&hellip;殿の為でしたら」<br />
「では&hellip;&hellip;わたしの介錯を」<br />
「殿！」<br />
「そしてその首を、どこかに埋めてはくれないか。この、醜くく爛れた顔を晒されたくはないんだ」<br />
「&hellip;&hellip;御意」<br />
　絞り出すように、五助は応えた。<br />
　必死に、涙をこらえて。<br />
「ありがとう」<br />
<br />
　吉継は、己の腹に刃を突き立てた。<br />
　吐き出された鮮血で、ごぼごぼと喉を鳴らしながら。<br />
　唇を微かに開き、声にならない言葉の形を作った。<br />
<br />
　さきち&hellip;&hellip;。<br />
　さよなら&hellip;&hellip;。<br />
<br />
<br />
<br />
「紀之介&hellip;&hellip;？」<br />
　ふっと、三成が呟いた。<br />
　目線の先は、松尾山。<br />
<br />
　嫌な、胸騒ぎがする。<br />
<br />
「殿、どこに行こうっていうんです？」<br />
　無意識のうちに、単身で松尾山の方へと向かおうとしていたらしい。左近に引き留められ、三成は我に帰った。<br />
「左近。&hellip;&hellip;すまん。何だか、嫌な予感がするのだ。紀之介に何かあったのではないかと、ふと思ったものでな」<br />
　左近は、どきりとした。<br />
　士気に拘ってはいけないと思い、三成には伏せていたが、小早川隊の裏切りは耳に届いていたからだ。<br />
「虫の知らせ、って奴ですか。殿にしては、随分と&hellip;&hellip;」<br />
　いつもの軽口で誤魔化そうとした、その矢先。<br />
　物見からの伝令が、届いた。<br />
「伝令！　小早川隊に続き、脇坂隊、小川隊、赤座隊、朽木隊も徳川に呼応！　大谷隊はほぼ壊滅し、大谷吉継殿、自刃！」<br />
<br />
　壊滅？<br />
　自刃？<br />
<br />
「&hellip;&hellip;今、何と？」<br />
　信じられぬ、といった表情で、三成は物見に問いかけたが、答えが変わるはずもなく。<br />
「紀之介が&hellip;&hellip;死んだ、と？」<br />
　物見も、左近も、何も言わない。<br />
　それは、肯定を意味していた。<br />
「そんな馬鹿なことがあってたまるか！　どけ！　俺が直接確かめる！　この目で見ぬまで信じぬ！　紀之介が死ぬものか！」<br />
「殿！」<br />
　三成の頬が、鳴った。<br />
「自分が、何者であるかを忘れるな！」<br />
「左近&hellip;&hellip;」<br />
「&hellip;&hellip;と。済みませんね、叩いてしまって」<br />
　でもこのくらいしなきゃ、聞いてくれないでしょ。<br />
　言外に含めて、左近は三成を諭す。<br />
「殿がこの戦を起こしたのは、ここにいるのは、何のためなんです？」<br />
「徳川から、秀吉さまの築いた天下を守るためだ」<br />
「じゃ、後はどうすればいいか、わかりますね」<br />
「落ちろと言うのか！」<br />
「なんだ、わかってんじゃないですか。&hellip;&hellip;さ、ここは食い止めときますから、早く」<br />
「嫌だ！　俺だけ逃げ出すなんて、出来ぬ！」<br />
「なに甘ったれたこと言ってんですか？　生きて、反撃の機会を伺うんですよ。最後まで諦めないで食らいつくのが、この戦を仕掛けた殿の責任って奴でしょう。それとも？　そんな覚悟もなく、甘っちょろい夢見事を掲げて、その結果、でかい犠牲を出した揚句に徳川に勝ちを譲るってわけですか」<br />
「まだ負けと決まってなど」<br />
「決してんですよ、もう。鶴の翼はふたつとも折れ、その身にも深い傷を負ったら、あとは地に落ちるだけなんですよ」<br />
<br />
　三成に、言い返す言葉はなかった。<br />
　左近に言われた言葉のすべてが、自分でも分っていたことだからだ。<br />
　だから。<br />
　言われるままに、馬に跨り、死地に赴く家臣団を見送る他なかった。<br />
<br />
「左近&hellip;&hellip;命令だ。死ぬな」<br />
「嬉しいこと言ってくれるじゃないですか。大丈夫、そう簡単にゃ死にませんよ」<br />
<br />
　強い信頼で結ばれた二人は笑みを交わし&hellip;&hellip;。<br />
<br />
　それぞれの、戦いの場へと旅立っていった。]]>
    </description>
    <category>[連作]誓い</category>
    <link>https://tsukuyono.blog.shinobi.jp/-%E9%80%A3%E4%BD%9C-%E8%AA%93%E3%81%84/%E8%AA%93%E3%81%84</link>
    <pubDate>Fri, 11 Mar 2011 18:00:18 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">tsukuyono.blog.shinobi.jp://entry/40</guid>
  </item>
    <item>
    <title>祈りにも似た</title>
    <description>
    <![CDATA[<p>　慶長5年、7月。<br />
　大谷吉継は、親友である石田三成の居城、佐和山城に向かっていた。<br />
　五大老筆頭の徳川家康が、会津の上杉を討伐すべく出陣し、吉継もまた、それに従軍する意思を示している。彼はそれに、三成を引き込もうと目論んでいるのだった。<br />
<br />
　――いや。<br />
<br />
　吉継は、籠の中でひとりごちた。<br />
　病で光のほとんどを失った瞳を閉じ、深く息をつく。<br />
<br />
　あの強情な男が、家康などに従うはずがあるまい。その上、上杉家家老の直江兼続とは妙に馬が合うようで、同い年ということもあってか若い頃から文を交わしあうほどの仲だと聞く。<br />
　こちら側につく要素は、何一つ無い。<br />
<br />
「でも、祈らずにはいられないんだ」<br />
　前田利家の死と石田三成の失脚で、武断派と文治派の均衡は完全に崩れていた。それだけでなく、家康は許可なく大名家同士の婚姻を行ってはならないという秀吉の取り決めを反故にし、次々と徳川家と他家とを結びつけていた。もはや、家康の地位は揺るぎようがないものになっている。<br />
　その証拠が、この討伐戦だ。<br />
　次の標的は宇喜多とも毛利とも噂される今、三成もいつ難癖をつけられ、命を落としても不思議ではない。<br />
「わたしは、君を死なせたくはないんだよ。佐吉」<br />
<br />
　だからどうか、死に急ぐような真似だけはしないでくれ。<br />
　――恨んでくれても、構わないから。<br />
<br />
<br />
　　　　　*　　　　　*　　　　　*<br />
<br />
<br />
「これはどうも、よくいらっしゃいましたな」<br />
　佐和山城に着いた吉継を出迎えたのは、石田家家老の島左近だった。この男は、相手の身分が高かろうが、それが自家であろうが他家であろうが、関係なくぞんざいな口をきく。<br />
「どうぞ、お上がりください。すぐに殿を呼んできますんで」<br />
　吉継は促されるまま、上がり込んだ。<br />
　目がほとんど見えないせいだろうか。些細な事を、肌で敏感に感じ取ってしまう。<br />
「左近殿」<br />
　前を歩いているであろう左近に、声をかける。<br />
「何かございましたかな？」<br />
「&hellip;&hellip;いや、なんでもない」<br />
　なんだか、城全体が張りつめている気がするのだけれど&hellip;&hellip;と、言いかけた言葉を飲み込んだ。<br />
　左近は三成をすぐに呼んでくる、と言っていた。つまり、少なくとも、動ける状態にはあるという事。それならば直接聞けば良い。<br />
　口のうまい左近殿より、口下手な佐吉の方が聞き出しやすいだろう&hellip;&hellip;そう踏んで。<br />
<br />
<br />
<br />
　奥の間に通された吉継がくつろいでいると、ほどなくして城主である三成が現れた。<br />
「紀之介！」<br />
　懐かしい、幼い頃の名で呼び、三成は吉継の手を取った。包帯に包まれているとはいえ、病で爛れたその手を、何もためらうことなく。<br />
　吉継もまた、友の手を握り返し&hellip;&hellip;。<br />
<br />
　肝が冷えた。<br />
<br />
「さき&hellip;&hellip;ち？」<br />
　なんだこれは。<br />
　これではまるで&hellip;&hellip;。<br />
<br />
「どうした、紀之介」<br />
「それはわたしが言いたい。なんだこの手は。まるで&hellip;&hellip;骨と皮ではないか」<br />
「それは&hellip;&hellip;。少々、忙しくてな」<br />
「本当に？　若いころから激務をこなしていた君が、ここまでやせ衰えるなんて、ただ事ではないと思うのだけれど。それに、城内も妙に張りつめているように感じる。&hellip;&hellip;答えてくれ佐吉。何があった？」<br />
　三成はしばし沈黙し、やがて、ゆっくりと口を開いた。<br />
「&hellip;&hellip;先日、宇喜多が反徳川を掲げ、兵を挙げた。反徳川で纏まらねば、とうてい敵う相手ではない。無論、俺も応じた」<br />
「&hellip;&hellip;なんてことだ」<br />
　吉継は、眼の前が暗くなるのを感じた。<br />
　この衰弱ぶりから推測するに、相当無理をしているのだろう。あちこちに使いを出し、文を送り、自身も足を運び、必要とあらば頭を下げているのだろう。この、自負心の塊のような男が。<br />
「佐吉。悪い事は言わない。今からでも遅くはない、考え直せ」<br />
「何を考え直せと言うのだ？　　家康の会津討伐に加担しろとでも言うのか」<br />
「&hellip;&hellip;ああ。わたしは、その為に来たんだよ。君を引き込むためにね」<br />
「ふざけたことを言うな。豊臣家と上杉家の縁は、俺と兼続が結びつけたようなものだ。かつて、織田家と宇喜多家を秀吉様と行長がそうしたように。それを、あの狸の元に下って上杉に刃を向けろと言うのか。裏切れと言うのか！」<br />
「だけどこのままでは&hellip;&hellip;」<br />
　君を死なせてしまうかもしれない。<br />
　そう言いかけて、吉継は口をつぐんだ。<br />
「&hellip;&hellip;何も、焦る必要はない。家康だって、もう若くはないんだ。一度、懐に潜り込んで利用し、機会を待つのも手じゃないか」<br />
「もう遅い」<br />
「え？」<br />
「もう、策は動いているのだよ。上杉の反抗も、その一つだ。狸が会津に向けて出立した所を挟む手はずになっている。西側から家康に合流しようとする動きも、兄上が先回りして抑え込んだ。毛利や真田とも話をつけた。あとは&hellip;&hellip;叩くのみ」<br />
「佐吉&hellip;&hellip;」<br />
　吉継は顔を伏せ、手を強く握り返した。<br />
　ぽつりと、言葉を紡ぐ。<br />
「&hellip;&hellip;なんで今更、わたしにそれを教えた？」<br />
　それままるで、責めるかのようだった。<br />
「本当は、知らせぬまま終わらせるつもりだった」<br />
「なぜだ！　わたしの身を案じたなどと言うつもりなのか？」<br />
　三成は、答えない。<br />
　それは、肯定を意味していた。<br />
「わたしも、君を死なせたくはないんだよ、佐吉」<br />
　優しく、諭すように。<br />
「だから、お願いだ。ここは一度、兵を引いてくれないか」<br />
「いやだ」<br />
　まるで子供のように首を振る三成の声は、震えていた。<br />
「&hellip;&hellip;怖いんだ」<br />
「怖い？」<br />
「隠居させられてから、ずっと足元が落ち着かないんだ」<br />
　やせ衰えた体をがたがたと震わせながら紡がれれる言葉を、吉継は、黙って聞いていた。<br />
　時折、そっと肩を撫でながら。<br />
「秀吉様を失って、利家殿を亡くし、松や虎に刃を向けられ&hellip;&hellip;中央からも遠ざけられた。こんな俺に、一体何の価値がある？　俺が俺である為には、秀頼様をお守りし、豊臣の天下を守らねばならないんだ」<br />
　たまっていたものを一気に吐き出すかのように、三成は言った。<br />
「&hellip;&hellip;秀吉様の築いた天下の中に、俺がいたんだ&hellip;&hellip;」<br />
「しっかりするんだ、佐吉。秀吉様はもういない。幻に己の居場所を見出すな」<br />
「だけど&hellip;&hellip;それが無くなったら、俺は俺でなくなってしまう」<br />
　すがりつくような友の目に、言葉に、吉継は言葉を失った。<br />
<br />
　そして後悔した。<br />
　こんな状態になるまで、異変に気がつかなかった事に。　<br />
　自負心の塊のような友人が失脚させられて、平常でいられるはずがないという事に気づくべきであった、と。<br />
<br />
「&hellip;&hellip;わかったよ、佐吉」<br />
　深く深く、息をつき。<br />
　吉継は口を開いた。<br />
「わたしも、君の策に乗ろう」<br />
　死なせたくないという思いで縛って、こんな様で生きさせて。<br />
　&hellip;&hellip;そんな生が何になろう。<br />
「だから、佐吉。昔のような、燃えるように強い目を見せてくれないか？」<br />
<br />
　三成と共に果てるつもりはなかった。<br />
　たとえわが身が倒れようとも、死なせてなるものか。<br />
<br />
　<br />
　――それは、祈りにも似た。<br />
　自分勝手な、強い願い。</p>]]>
    </description>
    <category>[連作]祈りにも似た</category>
    <link>https://tsukuyono.blog.shinobi.jp/-%E9%80%A3%E4%BD%9C-%E7%A5%88%E3%82%8A%E3%81%AB%E3%82%82%E4%BC%BC%E3%81%9F/%E7%A5%88%E3%82%8A%E3%81%AB%E3%82%82%E4%BC%BC%E3%81%9F</link>
    <pubDate>Thu, 04 Jun 2009 04:36:20 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">tsukuyono.blog.shinobi.jp://entry/39</guid>
  </item>
    <item>
    <title>雪の降る街</title>
    <description>
    <![CDATA[　はらり。<br />
<br />
　暗く澱んだ空から、白いものが舞い落ちてきた。<br />
　視線を巡らし、石田三成は頭上を見上げる。<br />
<br />
「&hellip;&hellip;道理で」<br />
　朝から酷く冷え込んでいたわけだ。<br />
　秋が終わり初めて降る雪に、三成は形の良い眉をひそめた。元々、都の冬は寒さが厳しいが、雪など目にしてしまっては余計に酷く感じると言うもの。<br />
　彼は細い肩を震わせ、屋敷へと戻る足を速めた。<br />
<br />
　　　　　*　　　　　*　　　　　*<br />
<br />
　屋敷に戻ると、そこはまるで別世界だった。<br />
　じんわりと、体中に染み入ってくる柔らかな熱。<br />
　冷え切った手足を温める、ひりひりとした痛みすらも心地良い。<br />
　しかし。<br />
「殿」<br />
　ほっと一息つく間もなく、声をかけてきたのは石田家家老、島左近。<br />
「あんまり遅いんで心配しましたよ」<br />
「すまん。つい、話し込んでしまってな。おかげで、すっかり降られてしまった」<br />
　口ではそう言うものの、表情は穏やかで、心なしか楽しそうでもあった。<br />
「全く。ちゃんと乾かさないと駄目ですよ。殿はすぐに腹を壊すんですから」<br />
「&hellip;&hellip;俺を子供扱いするな」<br />
　外の冷気のせいなのか。<br />
　それとも左近の言葉が癇に障ったのか。<br />
　白い顔をわずかに紅潮させて、声を荒げそうになる&hellip;&hellip;と。<br />
「――でも」<br />
　ぽつりと、奥から耳触りのいい声が聞こえて来た。<br />
「わたしも、左近殿の言い分に同感だよ。佐吉」<br />
<br />
　聞き覚えのある声に、佐吉、と呼ばれて。<br />
　三成は目を見開いた。<br />
<br />
　まさか。<br />
「紀之介？」<br />
　目線を上げると、三成の旧友であり、親友でもある大谷吉継の姿が、そこにあった。<br />
　いつもと変わらぬ、穏やかな笑顔を浮かべて。<br />
<br />
<br />
「ちょっと、急な用事でね。文を送っても、わたしが辿り着くのと大して変わらないだろうから」<br />
　奥の間に通された吉継は、いつもと変わらぬ調子で話し、薄茶を口に含んだ。<br />
　彼が敦賀の領主になってからは、会う機会はめっきり減ってしまった。それ故か、病魔に侵された彼の体が、会う度に酷く悪化しているように見えてしまう。<br />
　今も、整った顔の半分は覆面で覆われ、体にも指の先まで包帯が巻かれていた。<br />
「だから、直接来たと」<br />
「そうだよ」<br />
　多忙すぎる友人に対して少しも悪びれた様子もなく、吉継は小さく頷き、笑みを浮かべる。<br />
「居なければ、それはそれで仕方がないと思っていたけれど」<br />
　居れば、無理にでも時間を割いてくれるだろうから――。<br />
　言外に含まれた言葉を察して、三成は頭を掻いた。<br />
　紀之介には敵わぬ、と心の中で呟きながら。<br />
<br />
「&hellip;&hellip;本格的に降ってきたね」<br />
　わずかに障子を開け、窓の隙間から外を眺める吉継。<br />
「紀之介には、この程度の雪など珍しくもないだろう？　春日山の兼続が、あのあたり一帯は酷い雪と寒さで、冬になると身動きが取れないと言っていた」<br />
「うん。たしかに雪は深いけれど&hellip;&hellip;それでも春日山のあたりに比べれば、まだ多少は穏やかだから」<br />
　吉継は目を落とし、小さく呟いた。<br />
「&hellip;&hellip;少し、刺すような寒さが傷に凍みるけれど、それでもわたしは好きだよ」<br />
<br />
　雪はすべてを綺麗に隠してくれる。<br />
　醜いものも。<br />
<br />
　&hellip;&hellip;すべてを。<br />
<br />
<br />
「俺は嫌いだ」<br />
　きっぱりと言い放つ三成に、吉継は目を丸くした。<br />
「物資の流通が滞る。人も動かなくなる。足元もぬかるむ。そして何より&hellip;&hellip;寒い」<br />
　馬鹿正直すぎる言葉に、吉継は思わず噴き出した。<br />
「&hellip;&hellip;何がおかしい」<br />
「いや、佐吉らしいなと思ってね」<br />
　なぜ笑われたのか理解できない三成が、ふん、と鼻を鳴らす。<br />
　<br />
　窓の隙間から外を眺めると、白いものが積もり始めているのが見えた。<br />
　陽は厚い雲に覆われているものの、雪灯りが仄かに照らし。<br />
　雪が音を消しているのか、あたりはとても静かだった。<br />
「&hellip;&hellip;だが」<br />
　ぽつりと、静寂をかき消すかのように、三成が言う。<br />
<br />
「雪の日の澄んだ空気と静けさは&hellip;&hellip;嫌いではない」<br />
　かすかに、口元に笑みを浮かべて。]]>
    </description>
    <category>[読切]雪の降る街（子飼い）</category>
    <link>https://tsukuyono.blog.shinobi.jp/-%E8%AA%AD%E5%88%87-%E9%9B%AA%E3%81%AE%E9%99%8D%E3%82%8B%E8%A1%97%EF%BC%88%E5%AD%90%E9%A3%BC%E3%81%84%EF%BC%89/%E9%9B%AA%E3%81%AE%E9%99%8D%E3%82%8B%E8%A1%97</link>
    <pubDate>Sat, 07 Feb 2009 06:22:48 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">tsukuyono.blog.shinobi.jp://entry/37</guid>
  </item>
    <item>
    <title>椿</title>
    <description>
    <![CDATA[<p><br />
　花があった<br />
<br />
　目を見張るほどの、見事な赤い花弁<br />
　それは凛と咲く、一輪の<br />
<br />
　椿<br />
<br />
<br />
<br />
　ひゅう、と<br />
　風が吹いた<br />
<br />
　ことり、と<br />
　首がおちて<br />
<br />
<br />
　はらり、と<br />
　花びらが散った<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
　――否<br />
<br />
<br />
　その赤色は人の血で<br />
　椿の花は人の首<br />
<br />
<br />
<br />
　その首の<br />
<br />
　主は――<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
「&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;っ！」<br />
<br />
　声にならない叫びを上げ、大谷吉継は目を覚ました。<br />
　自由の利かない全身は強張り、いやな汗は滴り落ちるかのよう。<br />
<br />
　あたりの様子に耳をすませると、微かに蝉の音が聞こえる。<br />
　どうやら、居眠りをしていたようだ。<br />
<br />
「殿、いかがなさいましたか」<br />
　傍らに控えていた、側近の湯川五助が主を気遣う。<br />
「いや&hellip;&hellip;」<br />
　何でもない、と言いかけ、口をつぐむ。<br />
　こくり、と唾を飲み込むと、気のせいか鉄の味がする。<br />
<br />
「&hellip;&hellip;とても、悪い夢を見た」<br />
<br />
<br />
　あの夢は何だ。<br />
　落ちた首は、親友である石田三成のもの。<br />
<br />
　あいつが死ぬとでも言うのか。<br />
　病に犯され、明日も分からぬこのわたしよりも先に。<br />
　まさか。<br />
　そんな馬鹿な事があってたまるものか。<br />
<br />
<br />
「&hellip;&hellip;五助、籠の用意を。佐和山に向かう」<br />
「ですが家康殿は、上杉討伐の為、既に会津に」<br />
「後から追えば良い。&hellip;&hellip;なにやら嫌な予感がしてならないのだ」<br />
<br />
　石田三成が、かつての同胞に襲撃され、職を解かれて佐和山に隠居させられたのは昨年の春の事。あの自尊心の塊のような男が、あまりに理不尽な扱いを受けていながら、大人しく籠っている&hellip;&hellip;。<br />
<br />
　よくよく考えれば、おかしな話だ。<br />
　何かを企んでいても不思議ではない。<br />
<br />
<br />
　無論、取り越し苦労であればそれに越したことはない。<br />
　だが、血に濡れた椿の悪夢は脳裏に焼き付いて離れず、嫌な予感は膨れ上がるばかり。<br />
<br />
「あの、不器用すぎる大馬鹿者を、わたしより先に死なせてなるものか」<br />
　堅く握りしめた吉継の拳には血の色が戻り、ほとんど見えないはずの瞳には、強い力が宿っていた。</p>]]>
    </description>
    <category>[連作]椿</category>
    <link>https://tsukuyono.blog.shinobi.jp/-%E9%80%A3%E4%BD%9C-%E6%A4%BF/%E6%A4%BF</link>
    <pubDate>Wed, 19 Nov 2008 02:29:36 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">tsukuyono.blog.shinobi.jp://entry/19</guid>
  </item>
    <item>
    <title>襲撃事件</title>
    <description>
    <![CDATA[　豊臣家五大老のひとり、宇喜多秀家に長く仕える明石全登は、思いもかけない突然の来客にぽかんと口を開けた。普段の彼を知る者がこの顔を見たら、何事かと思うだろう。なにせ、常に沈着冷静で表情の変化に乏しく、その鉄面皮が崩れる事などほとんど無かったのだから。<br />
「済みませんね、こんな時間に」<br />
　軽い口調で言った、この男は確か。<br />
　丁寧に後ろに撫でつけられている前髪を崩さぬよう、指先で頭を掻きながら、全登は記憶を遡った。<br />
「&hellip;&hellip;確か、石田治部殿の」<br />
　島左近、といったか。<br />
　自分と同じように、年若い主君に仕える苦労人の筆頭家老。尤も、この左近の主君である石田三成は、全登よりも年上ではあるのだが。<br />
「ちょいと訳ありでしてね。しばらくの間、匿ってもらえませんかね？」<br />
　手にした火皿を近づけてみると、そこかしこに浅い刀傷が見える。<br />
「&hellip;&hellip;賊、ですか」<br />
「ま、似たようなもんです。尤も、賊なんかよりずっと性質が悪いですがね」<br />
　首を振りつつ、左近。<br />
「よい、左近」<br />
　左近の後ろから、声が聞こえてきた。彼の体に隠れて目に入らなかったが&hellip;&hellip;。<br />
「俺から話す」<br />
　姿を見せたのは、石田治部少輔三成、まさしくその人だった。<br />
<br />
<br />
「つまり」<br />
　宇喜多屋敷の奥の間に通された三成らは、当主である秀家と対面していた。<br />
　秀家は宇喜多家の跡継ぎでありながら、同時に秀吉の養子でもあり、その縁で三成ら豊臣恩顧の武将たちとは昔から面識がある。特に先代の直家に仕えていた小西行長とは縁が深く、彼と仲の良い三成とも自然と親しくなっていった。<br />
「前田屋敷から出た所を襲撃された、と」<br />
　政権を掌握せんとする家康に対抗する為、三成と前田利家が協力関係にあったことは知っている。しかし、その利家も数日前に世を去り、その葬儀が執り行われていたはずだった。<br />
「そうだ」<br />
　立場が目上であるにも関わらず、三成はぞんざいな口を利く。だが、秀家はそこが気に入っていた。幼い頃から周りを見れば、大大名の嫡子としてしか自分を見ず、底を見せずにへつらう者ばかり。彼にとって、三成のような男は貴重だった。<br />
「治部殿」<br />
　ぱちん、と扇子を閉じ、三成に突き付ける。<br />
「その者らに、思い当たる節があるのではないかの？」<br />
「何故、そう思われる」<br />
「まず、左近殿の傷の負い方。数こそ多いものの、ひとつひとつは浅い。腕の立つ賊の仕業であるならば、あの程度で済むはずもなく、治部殿も怪我を負っておるはずじゃ。逆に、弱ければ返り討ちにしておるはず。つまり、故あって討ち取る事の出来ぬ相手から、治部殿を守りながら撤退した結果&hellip;&hellip;と見ておるのじゃが」<br />
　ふう、と息を吐き出し、ぽつりと、三成が口を開いた。<br />
「&hellip;&hellip;見間違いであって欲しいのだがな」<br />
「治部殿は敵を作りすぎじゃ」<br />
　かぶりを振り、溜息をつく秀家。<br />
「じゃが、味方もおる」<br />
　ころり、と表情を変え、悪戯っぽく口元を綻ばせたその顔は、年相応の若者のそれに見えた。<br />
　懐から書状を取り出し、三成の手元へと投げ渡す。　<br />
「実はの、お主らが儂の元を訪ねてくるであろう事は知っておった」<br />
「&hellip;&hellip;若。初耳です」<br />
「話しておらぬのに、知っているはずなかろ」<br />
　全登の苦言に、しれっと答える秀家。<br />
「どこで誰が耳をそばだてているか分からぬ。その者の立場もある故、名は声に出せぬが、治部殿が何者かに襲撃されたとの知らせを受けた。そして、この屋敷へ避難するよう勧めたと。もしやってきたら、匿ってくれと」<br />
　三成はその文を開き&hellip;&hellip;覚えのある花押を見て息をついた。<br />
　屋敷に来た時と比べ、幾分、穏やかな表情になって。<br />
<br />
　それは、以前から個人的に親交のある佐竹義宣のものだった。<br />
　文には、こうも記されてあった。<br />
『治部が死んでは生き甲斐が無くなる』と。<br />
<br />
「全く。よく、このような事を恥ずかしげもなく書けるものだ」<br />
「さて、治部殿。和んでおる場合ではないぞ」<br />
　前に乗り出した秀家は、ひたり、とその細い首筋に扇子の先を突きつけた。<br />
　その眼光は鋭く、梟雄直家の血を色濃く感じるものであった。<br />
「単刀直入に問う。お主を襲撃したのは誰じゃ？」<br />
　相当に、酷な問いなのだろう。びくり、と体が微かに跳ね、目を反らした。<br />
「治部殿の出歩く場所や時間を把握しておる者。そして治部殿のその態度。儂が推測するに、それなりに近しい者の仕業と踏んでおる。じゃが、弥九朗や刑部殿がそのような事をするとは思えぬ。となると&hellip;&hellip;」<br />
「秀家さん？　その辺にしておいてもらえませんかね？」<br />
「&hellip;&hellip;よい」<br />
　今にも、掴みかからんとする勢いの左近を制止し。<br />
　三成は、ふぅ&hellip;&hellip;と長く息を吐き、ゆっくりと、口を開いた。<br />
　その体は微かに震え、心なしか青ざめているようにも見える。<br />
「その通りだ。俺に襲撃を仕掛けたのは、正則や清正をはじめとする武将７名。前田屋敷から出た所を襲われた。&hellip;&hellip;何の冗談かと思った。何かの間違いであればと。だが&hellip;&hellip;どうやら、現実だったらしい」<br />
　どこか困ったように、彼は言葉を続ける。<br />
「あいつらに嫌われている事は分かっていたが、まさか命を狙われるほど憎まれていたとは&hellip;&hellip;さすがに、堪えた」<br />
<br />
　朝鮮半島から撤退した日から、亀裂は深く広くなるばかり。<br />
　一体、いつから歯車がかみ合わなくなっていたのか。<br />
　今となっては知る術もなく、知ったところで最早手おくれだった。<br />
<br />
「ふむ」<br />
　色の違う髪のひと房をいじりながら、秀家は何かを思案しているようだった。<br />
「また、随分と厄介な者らに狙われたものじゃ。父上ならば、かつての仲間であろうとお構いなしに地に這い蹲らせて『生きていて御免なさい』と言わせるまでやり返した挙句、まんまと命も財産も奪う所なのじゃろうが&hellip;&hellip;。治部殿はそこまで冷徹になれぬ。こうやって、討ち取りもせず逃げてきたのが証拠じゃ。大方、傷一つ負わせなかったのじゃろう？　甘すぎるわ」<br />
「若。事実かもしれませぬが、お言葉が過ぎるかと」<br />
（&hellip;&hellip;あなたもね）<br />
　秀家をたしなめる全登の言葉に、左近は口の中で小さく呟く。<br />
「しかし、妙じゃな。それに、随分と行動も早い」<br />
「どういう意味だ？」<br />
「何故『今』、このような行動を起こす？　あ奴らにも領地があり、家臣もおる。利家殿が亡くなって均衡が崩れたとはいえ、五奉行の一人を襲撃して、ただで済むとは思わぬじゃろう。いくら憎んでいたとはいえ、そこまで短絡的に行動できるものじゃろうか。それも、集団で足並みを揃えて、じゃ」<br />
「まるで、誰かが糸を引いていると言わんばかりだな」<br />
「&hellip;&hellip;なに。儂はただ、可能性を言ったまでじゃ」<br />
<br />
「なんにせよ」<br />
　ころり、と表情を変えて秀家が言う。<br />
「そのような事が起きたばかりじゃ。それにもう遅い。今日は我が屋敷に泊まっていくがよかろう。今、出来ることは身の安全を確保すること。それだけじゃ」<br />
<br />
<br />
　　　　　*　　　　　*　　　　　*<br />
<br />
<br />
「全登。どう思う？」<br />
　三成と左近が下がり、二人だけになった部屋で、秀家は静かに尋ねた。<br />
　その眼光は鋭く、亡き父、直家を彷彿とさせる。<br />
「これが突発的なものであれば問題はない。立場を利用し、奴らを糾弾してやればいい。じゃが、もし黒幕がいたとすれば&hellip;&hellip;少々厄介じゃの。儂には一人しか思い浮かばぬ」<br />
「そうですね。彼らを利用できる立場の者、となると限られてきますから」<br />
「そして恐らく黒幕はおるし、あ奴らの後の保障もされておるのじゃろう。少なくともその場ではな。でなければ、このような軽率な行動は取れまい」<br />
　厄介なことだ、と口の中で呟きながら、息をつく秀家。<br />
　ゆらり、と火皿の灯りが揺らいだ。<br />
「儂の読みでは&hellip;&hellip;治部殿が生きておる以上、近いうちに行動を起こすはず。利家殿がいなくなった今、目の前の邪魔者は治部殿ひとりじゃからな。領土もさほど広くなく、成り上がりの治部殿にとって、五奉行の地位が最後の砦。無くなればそれで&hellip;&hellip;仕舞いじゃ」<br />
「殺せないならば、辞めさせるように仕向ける、と&hellip;&hellip;」<br />
「左様。暗殺に成功すればそれでよし。7将に罪を着せて処刑すれば邪魔者はいなくなる。暗殺に失敗しても、身の安全をちらつかせて隠居に追い込めば良い。応じなければ成功するまで襲撃させるだけの事」<br />
「&hellip;&hellip;成程。どちらに転んでも、身を汚す事なく得をする訳ですか」<br />
「あくまで、可能性の一つとして儂の仮説を述べたまでじゃ。じゃが&hellip;&hellip;いずれにせよ、豊臣家臣団の溝がここまで深まった今、遅かれ早かれ崩壊は起こるじゃろうし、そこに付け入るのは目に見えておる。治部殿が死なずに生きていてくれた事が、せめてもの救いじゃな。治部殿はまだ若い。いずれ反撃の機会は来るじゃろうし、なければないで作れば良い」<br />
「若が？」<br />
　全登の問いかけに秀家は答えず、しかしその口元には、不敵な笑みすら浮かべていた。<br />
<br />
<br />
<br />
　それから数日後、一件の責任を負わされた石田三成は五奉行を辞し、佐和山に隠居する事となった。<br />
　襲撃した福島正則ら7人への咎めは、何一つないまま&hellip;&hellip;。<br />]]>
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    <category>[連作]襲撃事件</category>
    <link>https://tsukuyono.blog.shinobi.jp/-%E9%80%A3%E4%BD%9C-%E8%A5%B2%E6%92%83%E4%BA%8B%E4%BB%B6/%E8%A5%B2%E6%92%83%E4%BA%8B%E4%BB%B6</link>
    <pubDate>Thu, 23 Oct 2008 07:13:36 GMT</pubDate>
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