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花があった
目を見張るほどの、見事な赤い花弁
それは凛と咲く、一輪の
椿
ひゅう、と
風が吹いた
ことり、と
首がおちて
はらり、と
花びらが散った
――否
その赤色は人の血で
椿の花は人の首
その首の
主は――
「…………っ!」
声にならない叫びを上げ、大谷吉継は目を覚ました。
自由の利かない全身は強張り、いやな汗は滴り落ちるかのよう。
あたりの様子に耳をすませると、微かに蝉の音が聞こえる。
どうやら、居眠りをしていたようだ。
「殿、いかがなさいましたか」
傍らに控えていた、側近の湯川五助が主を気遣う。
「いや……」
何でもない、と言いかけ、口をつぐむ。
こくり、と唾を飲み込むと、気のせいか鉄の味がする。
「……とても、悪い夢を見た」
あの夢は何だ。
落ちた首は、親友である石田三成のもの。
あいつが死ぬとでも言うのか。
病に犯され、明日も分からぬこのわたしよりも先に。
まさか。
そんな馬鹿な事があってたまるものか。
「……五助、籠の用意を。佐和山に向かう」
「ですが家康殿は、上杉討伐の為、既に会津に」
「後から追えば良い。……なにやら嫌な予感がしてならないのだ」
石田三成が、かつての同胞に襲撃され、職を解かれて佐和山に隠居させられたのは昨年の春の事。あの自尊心の塊のような男が、あまりに理不尽な扱いを受けていながら、大人しく籠っている……。
よくよく考えれば、おかしな話だ。
何かを企んでいても不思議ではない。
無論、取り越し苦労であればそれに越したことはない。
だが、血に濡れた椿の悪夢は脳裏に焼き付いて離れず、嫌な予感は膨れ上がるばかり。
「あの、不器用すぎる大馬鹿者を、わたしより先に死なせてなるものか」
堅く握りしめた吉継の拳には血の色が戻り、ほとんど見えないはずの瞳には、強い力が宿っていた。
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